茅場に揺れるササユリ(岩湧山)
岩湧山では、この時期山頂の茅場を中心に多くのササユリが咲きます。色合いも様々で、淡いピンク、少し濃いめのピンク、ほぼ純白のものなど見る人を楽しませてくれます。ちょうど開花し始めたばかりのようでお天気は微妙でしたが行ってきました。

緊急事態宣言、まん延防止措置などが続くコロナ禍の下、岩湧の森周辺の駐車場が閉鎖となっていることを知らず、車を走らせ少し焦りましたが、幸い岩湧寺周辺の駐車場は解放されていて助かりました。雲行き見ながら、お手軽なルートで散策しました。
下の写真は、主に「いわわきの道」で咲いていた花々です。「いわわきの道」は、なだらかな道で花を探しながらゆっくり歩くことができます。(一部、林道で咲いていた花もあります)ツルアリドオシやタツナミソウが見頃でした。

岩湧山の茅場は、滝畑地区の所有地で、古くから地元住民の方々により保全・管理が行われ、定期的な山焼きによって茅場を維持されてきました。その茅は茅葺き屋根材として供給されてきました。現在でも、この茅場から良質な屋根材が産出され、平成21年3月には、文化庁ふるさと文化財の森システム推進事業に基づく「ふるさと文化財の森」に指定され、文化財修復材として全国各地に供給されています。そんな茅場の説明と注意事項が書かれた看板が数か所立てられていますが、マジックのようなもので黒く塗られていました。書かれている内容に反対する方の仕業!?…言い分があるとしても大人げない行為にはとても賛同を得られないと思います。
この茅場には、冬を除き四季折々の山野草が花を咲かせます。今回のメインはササユリでしたが、希少なヤマトキソウの小さな群落も確認できました。曇りがちのお天気でしたが、咲き始めたササユリが揺れ、蝶々が花から花を飛び交う穏やかな茅場を散策しました。
ヤマトキソウ(山朱鷺草、学名:Pogonia minor )は初めて見た花でした。登山道わきに小さな群生が2か所ありました。環境省のレッドデータに指定がないのが不思議なくらいほぼ全国の都道府県で絶滅危惧種ⅠB類(EN)のカテゴリを受けています。ほとんどの花が開いていませんでしたが、後で調べてみるとこの状態が普通で全開することはほとんどないそうです。


茅場に咲くアザミの間を蜜を吸いながら、せわしなく飛び交うミヤマカラスアゲハやモンキチョウなど…警戒心が薄いのか街中で見るより間近で観察することができました。雨は降らず、青空がのぞく時間帯もあったので、山頂付近でのんびり食事をしました。

ササユリ(笹百合)は、6月~7月頃に淡いピンク色の花を咲かせる日本を代表するヤマユリです。名前の由来は、葉が笹の葉とよく似ていることからつけられたと言われています。「ユリ」とは風にあおられて花が揺れる様子から「揺すり」と呼ばれ、それが変化して「ユリ」になったそうです。また、鱗茎(地下部)は「百合(ひゃくごう)」と呼ばれ、生薬として使われてきました。
ササユリ(笹百合)の花言葉「上品」は、淡いピンク色の花を少しうつむき加減に咲かせる姿が控え目で上品なことからつけられたそうです。『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』という言葉があるように的を得た花言葉ですね。また、栽培が難しく、発芽から開花まで数年かかる珍しい希少な花とされていることから、「希少」という花言葉もつけられたと言われています。




ムヨウラン(無葉蘭、学名:Lecanorchis japonica)は、光合成をしない菌従属栄養植物で、別名をスケロクランと言います。名前が示す通り葉がありません。ムヨウランもヤマトキソウ同様に環境省のレッドデータに指定はありませんが、多くの都府県で絶滅危惧ⅠA類(CR)のカテゴリとなっています。今回は運よく咲いている場所を探し出せました。
