花咲く自然休養林(金勝アルプス)
金勝(こんぜ)アルプス一帯は、もともとヒノキの林に覆われていましたが、万葉の時代からヒノキが切り出され、江戸時代には「田上の禿げ」として知られる荒涼とした山域となり、水害の巣窟となっていたそうです。その後、治山事業、植林事業により現在のように緑豊かな山域になり、『特に景観が美しく、保健休養に適した森林』として林野庁が森林のレクリエーション機能を発揮させるために設けた 自然休養林(近江湖南アルプス自然休養林)に選定されました。
低山ですが、花崗岩が織りなす奇岩とザレた尾根が続く稜線は、アルプスの雰囲気を味わうことができます。そしてひとたび谷筋に入れば、一転して湿潤な湿地帯が連続して独特の風景と植生を育んでいます。
毎年のように6月下旬~7月初旬にかけて湿地帯に咲く花を楽しみにこの山域を歩いています。今回は梅雨空のお天気模様が続いていたので、花期を考えると少し早過ぎるのですが歩いてみることにしました。
尚、この山域の花の時期は、梅雨後半から夏にかけてなので、熱中症対策を万全にして歩くようにして下さい。特に水分補給は、のどが渇く前に少しづつ摂取するようにして、同時に塩分やクエン酸を摂るように心がけて下さい。
金勝アルプスの奇岩風景は、『奇岩の回廊を巡る(金勝アルプス)』をご覧下さい。


一丈野駐車場は、土日や休日は有料ですが、平日は無料で開放されています。自宅から1時間程度とアクセスも良く気軽に来ることができる山域です。今回も花がメインなので、先ずは天狗岩線の谷道を歩くことにしました。




天狗岩線の谷道は、沢沿いを歩きます。水の流れには多くの小魚が泳ぎ、ミヤマカワトンボなどトンボ類やホタルガなどが舞っています。山自体の保水能力は乏しいため、登山道にも水が流れるほど湿潤な地形で、食虫植物(モウセンゴケ、イシモチソウ、ミミカキグサなど)やキンコウカ、ノギラン、カキラン、コバノトンボソウ、オトギリソウなどが咲いています。







花期より少し時期が早く、まだ咲き初めや蕾の状態のものが多かったのですが、それでもキンコウカはいたるところで黄色い花を咲かせていました。キンコウカは通常群生することが多く、満開の時期には非常に綺麗です。

天狗岩線の谷道から尾根に上がると天狗岩線の尾根道に合流します。尾根に上がると湿地帯特有の花は見られなくなり、代わりに花崗岩の奇岩、大岩、ザレ場の尾根が続きます。この日は、竜王山へ向かい山頂を踏んだ後、北峰縦走線で天狗岩を探索し落ヶ滝線へ向かいました。途中、赤く色づいたウスノキの実や咲き始めたアクシバ、花期終盤のササユリを見かけました。


落ヶ滝線も天狗岩線の谷道同様、登山道にまで水の流れがあるような湿潤な地形が続きます。特に花崗岩の岩肌がむき出しになり、水が流れる場所は、独特の風景を見せてくれます。植生も豊かで、カキラン、コバノトンボソウ、ノギラン、テリハノイバラなどの群落を見ることができます。(例年、7月初旬前後が見頃になります)





落ヶ滝は、花崗岩が水の流れで磨かれ美しい色合いを見せてくれます。


