福寿草咲く北摂の山(ポンポン山)
大阪(高槻市)と京都(京都市西京区)の境界に位置するポンポン山(678.7m)は、東海道自然歩道と隣接していることもあり、多くの登山者、ハイカーが訪れることで知られています。特に早春に咲くスプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)のひとつ福寿草(フクジュソウ)の群生地が大原野森林公園の保護区にあるため、訪れる方がより多くなるようです。今回は、そのフクジュソウを見たくて初めてこの山域を歩いてみました。

本山寺古道と言われる道(東海自然歩道と重なる)で、本山寺(院号:霊雲院)方面へ歩きます。本山寺古道は、新道と旧道があるようですが、現在は東海自然歩道(車道)が主で丁石も置かれています。車道なので危険個所もなく安心して歩くことができます。

道にある丁石は、建てられた年は不明だそうですが、記載の住所から推測すると明治から大正時代のものだと思われます。東海自然歩道の西側尾根に山道があり本山寺古道の旧道と思われています。下山時に歩きましたが、一般的な山道でした。


本山寺は、下山時にゆっくり寄らせていただくとして、先ずはポンポン山へ歩を進めました。本山寺からポンポン山へ東海自然歩道を歩きますが、道はよく整備されていて非常に歩きやすい道です。勾配も緩やかで一般的なハイキングコースと言えます。道途中に出灰の町への道がありますが、分岐も明確なので迷うことはないと思います。ただ、驚いたことにこの山域ではよくクマが目撃されるようで、「クマ注意」の看板が目立ちました。直近では令和2年にも登山道で目撃されたようです。
ポンポン山山頂からは、京都市南部方面と大阪市・高槻市方面の展望がよく、日の出を見に登られる方も多いそうです。ただ、山頂周辺の木々を地主の方の了解なしに伐採したということで、地主の方が警察に被害届を出したという背景もあり複雑です。現在、ヒノキの植林が行われているそうですが、元に戻るには30年くらいかかると言われています。
山頂に設置されている二等三角点の点名が『加茂勢山』であるように、江戸時代までは『加茂勢山(かもせやま)』と呼ばれていたようです。『ポンポン』という名前の由来は、明治時代になり用いられるようになった呼び名で、当初は頂上のみを指していたようです。京都府設置の案内板には、『この山は正しくは加茂勢山といいますが、標高679メートルの頂上に近づくにつれて足音がポンポンとひびくことから通称ポンポン山と呼ばれています』と記されています。但し、名前の由来は異説あるようです。


ポンポン山山頂からフクジュソウ保護地区のある大原野森林公園への道も一般的なハイキングコースです。但し、もう一度山頂へ戻る場合は、約100m強を下って登り返すことになります。

大原野森林公園周辺は、環境省の生物多様性保全上重要な里地里山(略称「重要里地里山」)に選定されています。里山希少種の残る谷一帯では、地元で立ち入り制限や防鹿ネットのパッチディフェンス等を設け、フクジュソウ、ヤマブキソウ群落等の保全に取り組んでいます。環境省の選定理由は以下の通りです。
市の西南端にある、ポンポン山から北に広がる里山に位置し、「自然そのものが公園施設」を基本テーマに自然の地形を残し、必要最低限の整備を行った約134haの都市公園法上の都市林である。
かつて薪炭林として利用されてたクヌギ・コナラ二次林、尾根上のアカマツ林、斜面地のケヤキ林、沢の源頭部のオニグルミ林など、里山林の多様性が残されていることから、ニホンリスやオオムラサキ、ムラサキシキブなど里地里山に特徴的な動植物がみられる。また、暖温帯と冷温帯の移行帯的位置にあり、植物の多様性がとても高く、明るい林内ではフクジュソウやヤマブキソウなどの群生地も確認されている。
フクジュソウ(福寿草、献歳菊、学名:Adonis ramosa)は、キンポウゲ科の多年草です。典型的なスプリング・エフェメラルで春を告げる花の代表です。そのため、元日草(がんじつそう)や朔日草(ついたちそう)と呼ばれることもあります。福寿草という和名もまた新春を祝う意味があり、縁起物の植物として古くから栽培されてきたそうです。注)福寿草は毒草です。


本山寺(ほんざんじ)は、大阪府高槻市原にある天台宗の寺院で、本尊は毘沙門天。鞍馬寺、朝護孫子寺とともに「日本三毘沙門天」とも言われています。役小角が葛城山で修行中に北西に紫雲のたなびくのを見て霊験を感じ、北摂の山に来て自ら毘沙門天像を彫り、堂を建てて修験の道場として開山したのが始まりと寺伝に記せられています。その後、宝亀年間(770年頃)に光仁天皇の子・開成皇子が諸堂宇を建立して本格的な仏教寺院として創建したとされ、北摂三山寺として、根本山と号する神峯山寺、南山と号する安岡寺とともに北山と号して天台宗に属しています。『ウィキペディア(Wikipedia)』参照
