雪山の二つの顔(伊吹山)
冬山で怖い現象のひとつに、吹雪やガスなどで起こるホワイトアウトがあげられます。視界が白一色になってしまうと、方向どころか上下の感覚さえわからなくなることがあると言われています。ホワイトアウト状態の時、焦ってあちこち動き回ると、ルートから外れるだけでなく、滑落や雪崩などほかのリスクを招くことにもなりかねません。ホワイトアウトの状態は ずっと続くわけではないので、安全を確保できるところで、ツエルトをかぶるなどして保温に努めながら、その場で視界が開けるまで辛抱強く待つことが必要になります。
アルプスなど本格的な冬山だけでなく、近畿地方周辺の低山でもホワイトアウト時の適切な判断を求められることはあります。今回登った伊吹山は、五合目以降には森林地帯は無く、山頂まで視界が開けた山です。そのため道に迷う心配はなく、夏場は熱中症への対策が一番大切になります。その反面、冬季は積雪量が多く、その山容からガスも発生しやすい山でもあります。
今回は、年始の寒波が去った後、一度は雪も解けてしまい山肌が露出した伊吹山でしたが、数日前に強い寒波が入り新たに降った雪が白く伊吹を覆いました。この日は強い寒波も去り、高気圧に覆われる天気予報。気温の上昇でガスが発生することは想定内でしたが、想定以上にガスが多く、午前中は六合目以降はホワイトアウト状態になっていました。
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いつも利用させていただく駐車場からスタート…インフォメーションセンターは無人でしたが、協力金を投函。一合目までは植林地の中を歩きます。この日は、残雪がまだ凍結気味で歩きやすかったですが、気温が上がると泥水の小川状態になります。あまりにひどい時は、車道を辿っても一合目に行くことができます。(但し、距離的には遠回りになります)
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期待以上に積雪量は多く、一合目でアイゼンを装着しました。雪質は湿潤でやや重めでしたが、よく締まっていて歩きやすい状態でした。踏み抜くとそれなりに潜ってしまいますが、踏み跡を外さなければ全く問題ありませんでした。
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三合目手前から積雪量は多くなり、快適な雪原歩き…青空があれば最高なんですが(笑)
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六合目手前の避難小屋から山頂まで、積雪期は九十九折れの夏道ではなく直登ルートを登る予定でした。しかし、避難小屋に到着すると先行されていた皆さんが大勢休憩されていました。よく見ると休憩というより、歩くルートを思案されているようでした。避難小屋から先は、完全なホワイトアウト状態。風が吹いてくれるとガスが流されるので、少し様子見されているようでした。足元が見えるのは数メートル先までで十メートルも離れると真っ白な世界でした。ほとんど入山者がいない山域ならガスがとれなければ、ここで撤退する判断もありますが、伊吹山は幸いこの日も入山者はそこそこ多く、確認できる踏み跡を辿りながら進むことにしました。
山頂まで直登ルートではなく、夏道とそれを一部直登するルートを登りました。途中GPSで位置確認しながら歩きましたが、伊吹山にはこれといった目標もなく、探り探り歩いていました。ただ、周囲に他の登山者がいるので大きな不安はありませんでした。
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山頂でもやはり完全なホワイトアウト状態で白いガスに覆われていました。その後、一時間ほど山頂付近を散策したり、食事をとったりしてガスがはれないかと時間を費やしましたが、一瞬太陽が顔を覗かせましたが、ガスはかかったままでした。
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今回は、冬の伊吹山に登れ、ホワイトアウトにも遭遇できただけでも満足な山行きだったと思い下山することにしました。私にとって、伊吹山は体力のバロメーターで、特に積雪時の伊吹山は本格的な雪山を体験させてくれるので大好きです。
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下山を始めてすぐの出来事でした…急に下山方向のガスが薄くなり、視界が開け始めました。それはあっという間の出来事で何が起こったのかと誰もが足を止めて周りを見渡していました。まさに「奇跡」…ホワイトアウトを登りきったご褒美でした。
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ガスがかかっていた時には誰も歩いていなかった直登ルートに皆さんの足が向くようになりました。斜面には多くの「雪まくり」の跡があり、見ている前でも雪まくりが起こっていました。私も九合目辺りから直登ルートへ移動して下ることにしました。
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雪山と青空が成す素晴らしいコントラストと色合い…色々な表現があると思いますが、伊吹山の稜線と青空が描き出す『伊吹ブルー』は最高の芸術作品です。ガスに覆われた伊吹山と伊吹ブルーを一日の山行きで堪能できました。冬山(雪山)は、他の季節と異なり、体力も技術もハードルは
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折角のご褒美を無駄にしたくなかったので、三合目の旧ゴンドラ駅跡やホテル跡のある場所に立ち寄りました。この場所は、最高の伊吹山ビューポイントです。雪原には踏み跡も少なく青空と相まって美しい景色を見せてくれました。
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三合目から登山口まで、特に一合目~登山口間は、気温が上がってくると雪や氷が融け、登山道が小川のようになってしまいます。非常に歩き辛く、装備も汚れてしまいます。嫌な方は、遠回りになりますが車道を通って下山することをお勧めします。
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