「幸せを得る」黄花(行者還岳)
大峰山脈の中でも短時間で手軽に歩くことができる行者還岳周辺ですが、大峰の中でも山野草の宝庫と言っても過言ではない山域です。シロヤシオ、ヤマシャクヤク、ギンラン、シャクナゲ、ヒメレンゲ、バイケイソウ、クサタチバナ、トリカブト等々多くの種類の花々を見ることができます。特にP1486周辺は、石灰岩質の露石が多く見受けられ、鈴鹿山脈でよく見かけるカルスト地形に似た地形でアルカリ性の土壌だと思われます。そのためアルカリ性の土壌を好む花々が自生しています。私の記憶では5~6年前から網で厳重に保護された一角があり、近年夏場に花が咲くようになりました。柵の中では、シラネセンキュウやキツリフネ、カニコウモリに交じり、キレンゲショウマが咲いています。キレンゲショウマは大峰山脈でも元々自生していたようで、行者還岳周辺や山上ヶ岳東側の山域(阿古滝)などで多く見られていたようです。しかし、激減したことから自生地をネットでシカなどの食害と人の踏み荒らしから保護しているようです。
この日は、昼近くからの行動だったので、いつもは七曜岳までのピストンが多いのですが、行者還岳避難小屋で折り返すお手軽ハイキングになりました。ただ、今年の猛暑は、大峰の高地でも身体にこたえるものでした。
いつのも国道309号90番ポストの登山口にかけられていた行方不明者の掲示。3週間以上経過していましたが、外されていないということは、まだ発見されていないのかもしれません。大峰山脈では毎年多くの遭難事故が発生していますが、行者還岳周辺の山域は、特に遭難事故が多いと言われています。主には、行者還岳西側の山域(小坪谷)での道迷いやトラバース時の滑落が多いと思いますが、ツキノワグマの目撃情報もこの山域は多く注意が必要です。
国道309号90番ポストから清明ノ尾との出合いまでは、少し急登になりますが自然林の美しい山道です。朽ちていますが木製の階段が残っていて古くから歩かれていることがうかがわれます。また、巨木が多く、朽ちた木に新しい生命が芽吹くなど自然の営みを垣間見ることができます。
清明ノ尾との出合い近くにある巨木は、この道のシンボル的な存在です。
お決まりのタイタン広場に立ち寄り…私より10歳くらい年下のタイタン君は、いつからここにいるんだろう。
この尾根道の楽しみの一つが眺望の良さです。弥山や八経ヶ岳、鐡山やバリゴヤノ頭、大普賢岳や和佐又山、台高山脈と大台ケ原から紀伊半島南部の山々、少し歩けば稲村ヶ岳、大日山、山上ヶ岳と大峰の山並みが続きます。
行者還岳の避難小屋は、無人の避難小屋ですが非常に綺麗で設備が整っています。まだ、お世話になったことがありませんが、快適に過ごすことができる避難小屋であることは間違いないと思います。
久しぶりの大峰来訪だったのにスタートが遅く、結局行者還岳にも登らないままに下山することにしました。
ピークハントは諦めたものの物足りないので、下山は少しカルスト地帯を探索しながら歩きました。その寄り道のおかげでネットの外で咲くキレンゲショウマを発見。足場が悪い場所だったためうまく撮影できませんでしたが、それでも間近で見ることができました。
下山後、吉野の宮滝にある『梅谷醸造元』に立ち寄り、麹味噌、醤油(舌つづみ)、ポン酢しょうゆを買いました。久しぶりに店主の梅谷清二さんとも色々話をさせていただきました。梅谷さんも大峰や金剛山をよく登られています。