ヒロセ道とイワゴノ谷北尾根(金剛山)
金剛山を登られる方の多くは、やはり大阪側からの道を利用される方が圧倒的に多いと思います。郵便道やマツバカケ尾根道は、比較的利用者が多いと思いますが、それでも限られています。その中でも、ヒロセ道は廃道化していて、踏み跡も薄くなり年間通してもほとんど利用される方はいないようです。何か見所があるわけでもなく、一等三角点のある湧出岳に詰め上がることができる数少ないルートだという位です。今回はカトラ谷のお花畑と郵便道のイカリソウを目的に、高天地区の無料駐車場を起点に歩くことにし、ヒロセ道とイワゴノ谷北尾根を辿って湧出岳に登りました。
尚、ここでご紹介する道は、古くはちゃんとした道だったと思いますが、現在は廃道化しています。厭らしいトラバースや急峻な尾根道を歩くことになり、道を間違えるとイワゴノ谷へ下りてしまいます。キチンと読図ができる方以外は、経験者の方と歩かれることをお勧めします。また、現在も斜面崩壊が進んでいるので、状況が変化していることもあり得ます。





大規模な山抜けで土砂に埋まり風景が様変わりしてしまいましたが、崩落した斜面にも草木が茂るようになり、自然治癒が進んでいます。当時、山主さんや地元の方が、迂回路を提供していただき、崩落箇所には人が入らないようにしていただきました。
下の3枚の写真は、2012年5月6日に撮影したもので、高天の滝はきれいに二段になっていて、左上には不動明王像が見えています。また、現在、渡渉している箇所には、橋が架かっていて、高天滝の前には、休憩所がありました。地元の方にとっては、神聖な場所であったに違いないと思います。
今は、通行ができるようになった郵便道を歩くため、沢を渡渉します。


ここの不動明王は、いつ見ても立派で威厳を感じます。いつも献花がたえず、地元の方々が大切にされているのが伝わってきます。

郵便道もマツバカケ尾根道も分岐には適切な道標があり、道に迷うことはありません。郵便道は、大崩落後、迂回路を設置していただき今は安全に通行できますが、注意喚起のプレートは残されています。
ヒロセ道に入るには、数か所ある分岐をマツバカケ尾根道の裏道方向へ進みます。上の写真は、マツバカケ尾根道を裏道方向へ大きくカーブする箇所です。ヒロセ道に入る箇所は、今は踏み跡もほとんど無いため、このカーブの先で地形図を見ながら左に入り踏み跡を探って下さい。但し、植林地のため、むやみに踏み荒らすことが無いように注意して下さい。



上の写真の視界が開けた場所からイワゴノ谷から派生する涸れ沢を通過していきます。薄っすらあった踏み跡は、より見え辛くなりトラバースする斜面の崩壊も進んでいます。大きな危険ではありませんが、獣道より難易度が高い感じです(笑)

写真で見るより傾斜はきつく足の踏み場も狭いと思って下さい。




ヒロセ道につながるのは、三つ目の涸れ沢です。
しかし、今回は勘違いして二つ目の涸れ沢を上部に向かって上がってしまいました。



三つ目の涸れ沢にも水の流れはないのですが、沢全体はいつも湿気を帯びています。

三つ目の涸れ沢を上部に向けて登るのですが、浅い支谷と支尾根があるので、一番左端の沢筋を詰めるようにします。一見、別の尾根も登れそうな気がしますが、急勾配の上、砂地で足元も不安定なので間違わないように気を付けて下さい。等高線が浅くわかり辛いですが、地形図で確認しながら歩かれることをお勧めします。



先達の方々や古い投稿を見る限り、三つ目の涸れ沢を詰めて左側を走る尾根(イワゴノ谷北尾根)に上がるのが、ヒロセ道と理解しています。ただ、人が歩かれないようになってから踏み跡は薄くなったようで、どこがルートなのか判別できませんでした。沢をあまり詰め上がり過ぎると尾根に上がりにくくなるので、適当なところで尾根に向かいました。

左側の尾根は、イワゴノ谷から湧出岳方向に延びる尾根で、イワゴノ谷北尾根と呼ばれています。ヒロセ道は、涸れ沢からイワゴノ谷北尾根に乗り、湧出岳方面へ続く道です。この尾根は、かなりの急勾配です。その上、風化した花崗岩のザレた地面で滑りやすく、木の根も大きく張り出しています。両側は切れ落ちているので注意が必要です。
イワゴノ谷北尾根は、痩せ尾根で派生する尾根もないので迷うことはありません。しかし、一番の急登箇所を登りきった場所(下の写真)は、明らかに踏まれた道が横断しています。北側はマツバカケ尾根方向で、南側はイワゴノ谷上流部ですが、地形図で見る限り、等高線も込み合っていて道があるようには思えないので林業作業用の道かもしれません。

道らしき地点からもう一段急登を登りきると、笹に覆われた平坦な個所に出て、湧出岳へ向かう道に出合います。


役小角が法華経八巻二十八品を埋納したとされる経塚の葛城二十八宿は、現在も修験道の行場となっています。経塚には青岸渡寺(熊野修験)、七宝滝寺(犬鳴山修験)、転法輪寺(葛城修験)、聖護院(本山派修験)などの修験者による多くの碑伝が奉納されています。湧出岳には、【第二十一番経塚】金剛山湧出岳 妙法蓮華経 如来神力品が納められていると言われています。


ヒロセ道は、現在はほぼ廃道化していて、皆さんに歩くことをお勧めできる道ではありません。しかし、湧出岳に経塚があることを考えると山岳信仰を含め、昔は人の往来があったと思われます。金剛山には、このような道も多くあったのだと思います。
