急登の文殊東尾根(金剛山)
昔から金剛山三大急登と呼ばれているルートがあります。「中尾の背」「サネ尾」「文殊東尾根」が、そのルートです。その他にも、「石ブテ尾根47番」や「県境尾根」など急登で知られているルートがあります。難路や急登の判断基準は、感性、体感要素もあるので、人それぞれ一概に言えませんが、急登区間の距離、斜度、地形など総合的に判断されるべきだと思います。
山を歩く所用時間の計算では、水平距離1km、累計標高300m(斜度16.699°)を歩くには、1km=15分、標高差(上)300m=15分/100m×3=45分、トータル所要時間=60分と言われています。その計算式で、金剛山の急登箇所をまとめてみると下記の表のようになりました。斜度では「石ブテ尾根47番」、所要時間では「中尾の背」が一番でしたが、斜度はどのルートもかなりの急角度で、やはり金剛山の中では急登ルートになると思います。但し、水平距離、標高差、推定時間は、カシミール3Dでの計算値で、足元の状態や細かな起伏、個人の体力差、荷重の違いなどは加味されていないので、あくまで参考値です。
水平距離 | 標高差 | 斜度 | 起点 | 終点 | 推定時間 | |
中尾の背 | 1011 | 381 | 20.65 | 石ブテ東谷入口 | 丸滝谷合流地点 | 72 |
県境尾根 | 821 | 348 | 22.97 | 越口廃林道 | 太尾塞跡 | 64 |
サネ尾 | 971 | 314 | 17.92 | カヤンボ | サネ尾三叉路 | 61 |
県境尾根(西) | 567 | 301 | 27.96 | 越口廃林道(終点) | 太尾塞跡 | 53 |
文殊東尾根 | 464 | 246 | 27.93 | 伏見林道 | 文殊尾根道合流 | 43 |
石ブテ尾根47番 | 347 | 213 | 31.54 | 丸滝谷林道終点 | 石ブテ尾根合流点 | 37 |
(参考)千早本道 | 2362 | 549 | 13.09 | 高城茶屋 | 山頂捺印所 | 84 |
今回は、その急登ルートの中で最も一般的な「文殊東尾根(通称:ハードコース)」を久しぶりに歩いてみました。上記の表の通り、斜度は各ルートの中でも勾配がきつい方ですが、急登区間が短く比較的短時間で歩くことができるため利用される常連さんも少なくありません。

文殊東尾根の取付きには、百ヶ辻から伏見林道を進みます。




伏見林道の水場横から木製の階段を登りますが、ご存じの通り人気ルートの「寺谷」への入路です。





金剛山だけではなく、植林地を歩く時にはルールがあります。
- 木の根は、できるだけ踏まないよう歩く
実際はどうしても踏まないと歩くことができない場合もありますが、植物にとって木の根は、栄養分や水分を運ぶ人間でいえば血管や消化器官のようなものです。植生保護のためにも気を付けて歩きましょう。
また、歩く方にとっても、木の根は非常に滑りやすく事故や怪我につながるので注意して下さい。 - 植林された樹木は、一般的に根が浅く倒木に繋がりやすいと言われています。人が歩くことで土が削れたりすることで斜面の崩壊につながります。登山道以外の斜面などを歩かないようにしましょう。
- 山を歩く際は、足裏全体で地面をとらえ、ゆっくり体重移動して、足裏全体で地面に着地するように歩いて下さい。最近はトレランが流行っていますが、蹴り足で山を歩いたり、走ったりすることは本来自然を破壊する行為です。また、疲れない歩き方の原則です。
- 植林地は、林業のために整備された山域です。私有地、公有地に関わらず、山を傷める行為は避けて下さい。金剛山でも地権者の方とのトラブルが絶えません。寺谷が通行禁止になったことを忘れないで下さい。
文殊東尾根は、写真をご覧いただければわかると思いますが、かなり急峻な道です。また、斜面もかなり荒れていて木の根が浮き出しています。植林地なので落葉はありませんが、木の根や凍結、積雪などで滑りやすくなっている場合があります。歩幅とペースを抑え、段差にできるだけ近づき、小股で上れる段差を見つけて歩くようにしましょう。

文殊尾根には、伏見林道やババ谷、妙見谷へ通じている道が多くあります。文殊東尾根は、文殊尾根の主稜線に合流して文殊尾根道で山頂方面へ向かうことになります。この日は、文殊尾根道を少し山頂側に歩くと、妙見谷側からの季節風が通り抜け、道は凍結し、樹木には霧氷が目立つようになりました。低温状態が続いているので、風の通りが良い尾根道では、チェーンアイゼンなどが必要です。


山を常時歩かれている方にとっては、文殊東尾根も大きな危険を伴うルートではないと思いますが、かと言って一般的な登山道と比べれば、やはり難路であることには間違いありません。私はよく下山時に利用しますが、かなり注意しながら歩きます。
余談ですが、山頂売店で葛城宮司さんから勧められて『金剛山ビール』を初めて飲みました。
「金剛山ビール」は、金剛山系の源流から湧き出る美しい湧き水と千早赤阪村産の希少な「棚田米」を使用してつくっているそうです。コメを配合したビールということですが、地ビールらしい優しい味わいでした。まだ、販売されている場所が限られているようですが、是非、山頂売店でご賞味あれ(笑)詳しくは、http://kongosanbeer.com/ でご確認下さい。
