絶壁・奇峰の二峰を歩く(兜岳、鎧岳)
よく歩く高見山地の高見山、三峰山、学能堂山からよく見ることができる曽爾高原と室生火山群の山々。昨年は、曽爾高原の二本ボソと倶留尊山を歩き、先週、三多気の桜駐車場から大洞山と尼ヶ岳を歩きました。1000mに満たない山がほとんどの山域ですが、この山域の山々は、山容が独特です。今回は、室生火山群の中でも山容が特異な兜岳と鎧岳を歩いてきました。
鎧岳(標高894m、別名:雄岳)は、天を摩す鎧を着たような雄々しい岩山、兜岳(標高920m、別名:女岳)は、鎧岳のすぐ西側にあり、鍬形の兜のような山容から名付けられています。両峰は、昭和9年12月に国の天然記念物に指定されています。


サンビレッジ曽爾(奥香落オートキャンプ場)には、登山者用の駐車場は無いため、県道の路駐可能な場所に車を停めて、兜岳から周回することにしました。駐車地から県道を少し歩くと眼下に「長走りの滝」を見ることができます。県道からはその全貌を見ることはできませんが、100m近くありそうなナメ滝です。機会があれば下りて見てみたいものです。


県道の目無橋から道標が差す左手に道を進むと「済浄坊(さいじょうぼう)の滝」へ向かうことができます。分岐からは、整備された道が続き10分程度で済浄坊の滝(下の滝)に到着します。下の滝から少し進むと上の滝があります。この日はやや水量に乏しかったのですが、それでも滝姿が美しく穏やかな表情を見せてくれました。下の滝付近には、水煙大不動明王と書かれた石碑があり、古くは修験道の行場か霊場だったのかもしれません。
済浄坊の滝から県道の分岐まで戻り、県道を進むと延命地蔵のある場所へ向かいます。この延命地蔵から兜岳への道があるようですが、現在は県道をもう少し上った場所からハイキングコースは設定されていました。


延命地蔵の裏側から兜岳への道があるようですが、現在は県道を少し上がった所から入山するのが一般的です。






山容は、鎧岳の方が切り立っており急峻に見えますが、兜岳の方が急峻なルート取りになっています。この山域は、古くから東海道自然歩道が通っていることもあり、ハイキングコースが整備されています。道標も峠など分岐には設置されていて、道に迷うことも少ないと思います。但し、ハイキングコースと称されていますが、兜岳周辺、古光山周辺など険しい道も多いので注意も必要です。




兜岳から鎧岳までは、一旦峰坂峠まで下ることになります。南側斜面に比べると兜岳の北側斜面の勾配は少し緩やかですが、それでも降下地点までは痩せ尾根が続き、下降を始めるとお助けロープが張り巡らされていました。

峰坂峠から小さなピークに登り、もう一度暗部に下ると分岐があります。この分岐も峰坂峠の道とも合流します。鎧岳から下ってくるとこの分岐が下山口となっているようです。


兜岳よりも急峻な山容に見える鎧岳ですが、ハイキングコースは西側の緩やかな斜面を通っているので兜岳ほど苦労することはありませんでした。浅い谷筋に沿って道が続いていて、稜線に到達する短い区間だけが急登になります。
鎧岳には、三等三角点(点名:鎧岳、標高:893.6m)が設置されていますが、樹木に覆われ視界は開けていません。また、山頂から南側に尾根が続いていますが、東側、南側は斜面に柱状節理が見られる垂直に切れ落ちた大岸壁になっています。山頂には、注意書きもありますが、登山道以外には立ち入らないようにしましょう。

鎧岳から来た道を戻り、下山口の道標がある分岐を下りました。植林地の中を整備された道が続いています。かなり急な斜面ですが、道が九十九折れに通っているので比較的楽に下ることができました。分岐からしばらく下ると舗装された林道に合流します。


金強(きんつわ)稲荷社の由来は、インターネットで検索しても詳細はよくわかりません。某記事に「曽爾村葛山の伝説より」との注釈付きで下記のような記述がありました。
『大字葛にある金強神社は正一位稲荷大明神をまつる。開運出世、財運充満、福徳の神である。明治の初め、萩村明七氏が屋根葺の萱を字オンジへ刈りに行った。すると白い蛇が出ているのを見た。妙なことと思い、稲荷下げをする人に拝んで見てもらうと、ダケ神社へ稲荷さまをまつれということだとわかった。十五人の同志によって斎いこめることになり、京都の伏見稲荷へ参り、勧請してまつる。今もこの十五人は稲荷講を結んでいる。一説には、穐西氏の先祖が白狐の夢をみた。この時、村の人も同じ夢をみたので、金強神社をつくったのが起こりだともいう。』

鳥居から本殿は近くにあるのかと思いましたが、山ノ神の祠から急な斜面にロープが張られた道が延々と続いていました。地形図で確認すると、直線距離で約400m、標高差約155mあり、鎧岳の南斜面を中腹まで登ることになりました。ある程度整備された道ですが、山道と変わらないので登られる際は、足元に注意が必要です。



金強稲荷社に立ち寄った後、東海自然歩道を辿って駐車地に戻りました。
