伊賀富士(尼ヶ岳)
全国には、それぞれの地域に「富士」の名前を付けた「ふるさと富士」が数多くあり、その数は少なくとも340あるといわれています。今回歩いた伊賀の最高峰「尼ヶ岳」もそのひとつで、「伊賀富士」と呼ばれています。標高957.4mの独立峰で、室生火山群の東の端に位置しています。隣の大洞山同様、流紋岩質の溶結凝灰岩が浸食作用や変位作用を受けて形成されたと言われています。山頂からの眺望が素晴らしく、北には伊賀盆地、東には伊勢湾、南には高見山地、台高山脈の山々、西には、室生火山群の山並みを望むことができます。


三多気の桜駐車場から真福院に立ち寄って、大洞山雌岳、雄岳に登った後、東海自然歩道に出合う分岐から倉骨峠へ向かい、尼ヶ岳を目指しました。大洞山への道同様に歩く道はよく整備されています。道は東海自然歩道でもあり、多くの人が歩かれるようです。




倉骨峠、大タワなど独特の名称がつく地名が多いのですが、名前の由来はよくわかりません。三重県津市美杉町太郎生及び美杉町八知と伊賀市高尾の境にまたがって存在する山域のためか、県道や林道、昔からの生活道の名残など道が色々交差しているようです。倉骨峠からは、比較的平坦な道が続きますが、途中から勾配がきつくなり、階段が出てくるあたりはかなりの急勾配です。また、山頂近くに近ずくにつれ、大きな樹木は無くなり笹に覆われるようになってきます。

尼ヶ岳は、大阪湾へ流れ込む淀川水系の木津川と伊勢湾へ流れ込む雲出川の分水嶺の山です。独立峰で山頂部に樹木が無いこともあり、山頂からは素晴らしい眺望を望むことができます。また、山頂部は広大な台地上になっていて多くの人が集う憩いの場でもあるようです。
正式名称である尼ヶ岳や通称である伊賀富士以外にも、首ヶ岳、大山ヶ岳という呼び名が付いているそうです。また、江戸時代までは首岳、天岳という呼び名があったことが分かっていて、『三国地誌』には「本国(伊賀)一ノ名嶽ナリ、因テ名ク」という記載があるそうです。一説には、尼僧が笠をかぶった姿に似ているからとも言われています。



大洞山中腹にある、スカイランド大洞キャンプ場を基点として、大洞山雄岳、雌岳の縦断と、中腹を横切る石畳歩道を組み合わせたハイキングコースを「大洞山石畳コース」と呼ぶそうです。そのうち約2kmの区間は、苔に覆われた石畳が続く美しい道です。周辺には、大洞石と言われる火山特有の軽石に緑の苔が付き、とても神秘的な空間が広がっています。今回は、日差しには恵まれませんでしたが、木漏れ日が入るともっと素晴らしい風景を見ることができたと思います。また、山野草も豊富で、ジンジソウやヤマハッカが多く咲いていました。


今回は、大洞山と尼ヶ岳を縦走し、苔に包まれた石畳を踏みしめて歩いてきました。一般的なハイキングコースですが、大洞山と尼ヶ岳直下の道は急勾配の場所もあり、縦走するとそれなりに距離もあり体力を必要とします。また、大洞山石畳コースは、花の時期などにもう少し時間をかけて散策してみたいと思いました。
