寒波の贈り物(金剛山)
大阪都心部や奈良市街地から1時間程度で登山口まで来ることができる金剛山。多くの山野草が自生し、ブナの原生林は新緑や紅葉の季節には素晴らしい風景を見せてくれます。そして金剛山にもっとも多くの人が訪れるのが、なかなか都会近郊では見ることができない霧氷と氷瀑の冬期です。
残念ながら、近年は地球温暖化の影響か?昔のように強い寒波がなかなか日本には来なくなり、滝が完全に氷瀑することが少なくなっていました。
今冬は年末年始から断続的に強い寒波が入り、金剛山でも-5℃を下回る日が続き、-11℃程度の日も数日ありました。滝が完全な氷瀑状態になるには、-5℃以下の日が4~5日以上続くことが必要だと言われていますが、今冬はその条件を十分満たす日が続きました。この日は、二ノ滝が完全に凍ったという情報もあり、ツツジ尾谷(筒城谷)を歩いてきました。

この日は、日曜日ということもあり、金剛登山口バス停周辺の駐車場は満車状態で駐車できず、ロープ―ウェイ前の府営駐車場に駐車しました。ツツジ尾谷から登るために、府道705号を歩いて下るアルバイトをする羽目になりました(笑)※ロープ―ウェイ前の府営駐車場が、満車になることはほとんどありません。

黒栂林道は、ツツジ尾谷、カトラ谷など多くの道に通じる金剛山の主要な登山道になっています。ツツジ尾谷へは、先ず黒栂林道を歩きます。林道なので車が通行できる舗装道で山道に入るまでの足慣らしと考えて下さい。

上の写真の分岐は、ツツジ尾谷の他、タカハタ谷、松の木道、水ヶ阪尾根への入路でもあります。
ツツジ尾谷は、沢沿いに道が続いています。谷には、腰折滝、一ノ滝、二ノ滝と呼ばれる落差のある滝があります。小滝と違い滝近くを直登することはできないため、滝を大きく巻く道があります。道は明確ですが、全体的に道幅が狭く、谷側は深く切れ落ちています。お助けループが設置されている箇所もありますが、古いものが多く頼ることは危険です。また、落ち葉や積雪、特に凍結してアイスバーンになっている時は、非常に滑りやすく注意が必要です。腰折滝の巻き道も危険個所のひとつです。
- 凍結時などは、チェーンアイゼン、軽アイゼンなどを装着して下さい。
- お助けロープは、補助として利用して頼り過ぎないようにして下さい。(体重をかけない)
- 三点支持の基本を守って下さい。
- 原則、できるだけ斜面側を歩くようにして下さい。
- 離合の際は、道幅が広いところで行ってください。



腰折滝を高巻きすると沢沿いに道が続き、大きな堰提が次々と現れます。






ちょっとした標高差ですが、二ノ滝が凍っても一ノ滝の中央部が凍ることはなかなかありません。しかし今年の寒波は、その一ノ滝も凍り付かせる強力な寒波だったようです。

一ノ滝を高巻く道も道幅が狭く急勾配の斜面をトラバースして歩きます。
本当に久しぶりに完全に氷瀑した二ノ滝を見ました。過去10年間でも水の流れがすべて凍り付き、岩盤が見えなくなるほど凍り付く姿は、なかなか見ることができなかったと思います。ただ、今年は積雪量が少なく湿度が低いためか?全体的なボリューム感に欠けるのが少し残念でした。

二ノ滝を見学した後、この谷で一番厄介な道を登らなければなりません。滝を高巻く道を歩く際の注意点は、前述した通りです。ただ、この時期の金剛山は、山道に不慣れな方や小さなお子さんを連れられた家族やグループ、年配の方々など様々な方も多く歩かれています。数日前にもこの場所で滑落事故が起こっています。幸い死亡事故には至らなかったのは救いでした。
- 人との距離をある程度取って下さい。特に山道に不慣れな方の後ろに付くと焦らせ歩くことへの注意力が散漫になり危険です。
- トラバース道が込み合っている場合は、追い越さず距離を開けて歩いて下さい。
どうしても追い越す場合は、余裕をもって離合できる場所で声を掛け合って下さい。その際、待機する方は斜面側で安全を確保して待機して下さい。 - 原則、沢沿いの道は下る方が危険です。込み合っている場合は、下ることは避けて下さい。
- 山道に不慣れな方を見かけたら、声掛けして安心感を与えてあげて下さい。
不慣れな方を急かすような歩き方をする方を数人見かけました。山が好きで歩かれているのなら、他の人、特に初心者の方などへの思いやりや配慮を持っていただきたいと思います。また、この日二ノ滝でアイスクライミングされていたグループがおられたようですが、それぞれの山が持つ環境、自然や歴史、宗教、地域性を入山する人は、もっと考慮する必要があると思います。宗教色の強い山域では静かに山を楽しむ、自然の生き物、造形をむやみに傷つけないなどを守っていただければ幸いです。
但し、大前提として、山を歩くということは危険と隣り合わせです。アルプスでも身近な里山でも危険なことに何ら変わりはありません。整備の行き届いた観光地でない山へ安易な気持ちで立ち入ることは避けて下さい。
二ノ滝を巻き終えた後、沢沿いに少し歩くと六地蔵尾根に登る道とツツジ尾谷を詰め上がる源流ルートに分岐しています。今回は、源流ルートに進み、千早本道と合流するルートを歩いてみました。





ツツジ尾谷の源流域は、古くから治山事業が行われていたようで、石垣や間知石で造られた堰提が残されています。谷はV字形状で明るい感じなのですが、夏場は藪に覆われている箇所も多く、落葉時期に歩く方が歩きやすいかもしれません。


