花と絶景の若狭富士(青葉山)
青葉山は、福井県大飯郡高浜町と京都府舞鶴市にまたがる東峰(693m)と西峰(692m)の2峰からなる双耳峰です。青葉山は、東部海岸から眺めると富士山のような秀麗な山容を見ることができるため「若狭富士」とも呼ばれています。
青葉山は信仰との関わりが深い山で、舞鶴市側の西中腹には西国三十三所第29番札所である青葉山松尾寺が創建され、高浜町側の東中腹には中山寺が創建され、両寺とも山号を「青葉山」としています。また、東峰の山頂には青葉神社、西峰の山頂には青葉神社西権現が祀られています。古来より若狭三山(青葉山、多田ヶ岳、飯盛山)の一つとして修験道が盛んにおこなわれていたそうです。
また、青葉山にだけ自生するオミナエシ科の多年草「オオキンレイカ」のほか、イワヒバ科のヒモカズラなど、多くの植物が自生していることでも知られています。登山道もバラエティに富み、青葉山の東峰~西峰までの縦走ではスリルを味わえたり、岩室をくぐったり、山頂や途中のポイントからは内浦湾、高浜町の海岸線や町並みが見渡せます。

今回は、この時期登山道に多く見られるミスミソウの花と日本海側の絶景を楽しみに中山登山口から東峰、西峰と歩き、松尾寺に下って中山登山口まで周回してきました。予想に反して人出も少なく、天候にも恵まれのんびりした時間を楽しみことができました。

初めての山なのでどのようにルートを取るか考えた挙句、中山登山口から周回することにしました。青葉山ハーバービレッジ(青葉公園)には、トイレも完備されているので立ち寄りましたが、開園が8時30分ということで、すぐ傍にある中山登山口駐車場に停めることにしました。平日ということもありましたが、出発時も帰った時も駐車していたのは自分だけでした。

中山登山口から青葉神社の鳥居をくぐり山道に入り、植林地の中を整備された道が続いています。高浜テレビ・FMラジオ中継局のある場所に到着すると高浜湾が見えてきます。中継局から少し歩くと程なく青葉山展望台に到着します。

青葉山展望台からは、高浜湾を一望することができます。この日は、お天気も良く高浜湾、高浜漁港がきれいに見えていましたが、やや霞がかかっていて遠望は望めず、越前方面を見ることはできませんでした。


展望台から少し歩くと青葉神社前宮の金毘羅大権現に到着します。この周辺は広場になっていて、南側の今寺や高野地区を見下ろすことができます。神社となっていますが、真言が掲げられていて、修験道で用いる「天狗経」に関わっているようです。

青葉山東峰の東側に「馬の背」と呼ばれる痩せ尾根があります。左側(南側)が切れ落ちている痩せ尾根ですが、足場のフリクションはしっかりしているので慌てず歩けば問題はありません。どうしても自身が無ければ、右側に巻く道もあります。


「馬の背」から少し登ると青葉山東峰(標高693m)に到着します。東峰には、青葉神社の灯篭と祠があります。三角点はありませんが、山名プレートがいくつかかかっています。祠の裏に小高い場所があり、そこが最高点だと思います。
今回歩いた周回ルートで、登山として一番の核心部は、東峰と西峰間の岩稜部の道だと思います。安山岩と火山砕屑岩の浸食された岩稜地帯が続き、ロープや鎖、梯子が多数現れるアスレチックなルートです。補助用のロープなどは頑丈で信頼できるものなので、注意して歩けば問題ないと思いますが、気象条件など足元が不安定な条件や強風が吹く中では避けた方が良いと思います。

核心部を通り抜けると尾根伝いに西峰の岩峰が見えてきます。右手北側には、木々越しに日本海が見え隠れしています。西峰の手前には、泰澄大師の修行場だったといわれる「大師洞」があり、胎内くぐりのようにして進みます。また、氷河期を生き延びた子孫と思われる自生天然スギの大木を見ることもできます。



「大師洞」を潜り抜けて目の前に見える岩峰を回り込むと、西青葉神社(西権現)の祠と避難小屋が見えてきます。西峰のピークは、西青葉神社(西権現)のすぐ上に位置し、手摺に沿って登ることができます。ピークからは、内浦湾を一望することができます。そこには、関西電力の高浜発電所(原子力)も見ることができますが、私個人的には原子力発電には複雑な思いがあります。



西峰から西に約200mに鎮座する松尾寺奥の院(青葉山妙理大権現)は、登山道から一段高い場所に祀られています。社殿は鉄格子の覆屋に入っています。神仏分離の際に、松尾集落と今寺集落の争いになって社殿が破壊され、今寺集落によって再建されたものだと言われています。

松尾寺奥の院(青葉山権現)から松尾寺をつなぐ道は、よく整備されていて大きな危険個所はありませんが、鉄製の梯子やお助けロープなどが設置されている急勾配の道が続きます。点在する露出した岩や落ち葉が登山道にあるので足元には注意が必要です。

西国三十三所・二十九番霊場の青葉山松尾寺は、京都府舞鶴市にある真言宗醍醐派の寺院です。重厚な本堂と大師堂を廊下がつなぐ姿がとても印象的でした。敷地は決して広くはありませんが、歴史を感じ取れる良い雰囲気のお寺です。

松尾寺から駐車地までは、今寺や高野地区の道を歩きます。今回は、お天気にも恵まれ、多くの花と日本海の絶景を楽しむことができました。平日ということもあり、出会った方もほんの数人で、山頂での休息を含め、のんびりした時間を過ごすことができました。
