渓谷にひっそり(キバナサバノオ)
キバナサバノオは、環境省レッドリスト絶滅危惧II類(VU)に指定され、岡山県、滋賀県、京都府、兵庫県では、絶滅危惧Ⅰ類に指定されています。過去に、岡山県、兵庫県、京都府、福井県、滋賀県の限られた山域で確認されていますが、ここ数年は年々情報が少なくなっていました。今回訪れた自生地も昔は大きな群生もあったそうですが、崩落など自然環境の変化や盗掘など人為的な問題などで、年々個体数が減少していました。5年ぶりに訪れた谷でしたが、以前の群生地では発見することができませんでした。
今は登山者もほとんど歩かない谷をコースタイムの倍以上時間をかけて探し歩き、その甲斐あって、3箇所で花や蕾を付けた株を見つけることができました。この谷は、登山道に崩落があり迂回路が設けられましたが、その後も沢筋で法面の崩壊が進んでいます。
何はともあれ、5年ぶりの再訪で健気に咲く花姿を見ることができてホッとしています。
キバナサバノオ(黄花鯖の尾、学名:Dichocarpum pterigionocaudatum)は、シロカネソウ属の中でも分布域が、岡山・兵庫・京都・滋賀などに限られている希少種です。絶滅危惧II類(VU)に指定されている種の中でも、特に希少な種と言えます。トウゴクサバノオに似た花ですが、花の大きさが数倍大きく、とても美しい花です。もちろん山を歩き初めて知った花ですが、多くの花の中でも思い入れのある花です。
キバナサバノオが咲く谷は、きれいな水が流れ、渓流沿いの木々や岩には苔がびっしりと付いています。そして多くの山野草が育っていて、この時期多くの花を見ることができました。ミヤマカタバミ、ショウジョウバカマ、エンレイソウ、ハクサンハタザオ、コチャルメルソウ、タチネコノメソウ、スミレサイシン、タチツボスミレなど。
谷に向かう尾根も多くの花が咲いています。その中でも、ひときわ目を引くのが、イワウチワ(岩団扇、学名:Shortia uniflora)です。花言葉「春の使者」の通り、雪解けとともに山を彩る代表的な山野草のひとつです。北方系の花に多く見られますが、イワウチワも個体差が大きく、特に花の色は淡いピンクを主体に、白色に近いものや濃いピンクなどを見ることができます。
尾根道には、イワウチワの他にも多くの花が咲いていました。特にこの時期は、タムシバが山の斜面を白く覆います。タムシバは、別名「ニオイコブシ」と言われるように、柑橘系の爽やかな匂いが山に漂います。
