カルスト台地の名峰(御池岳)
御池岳は、滋賀県東近江市と三重県いなべ市に接する鈴鹿国定公園内にある標高1247 mの鈴鹿山脈最高峰です。
1980年(昭和55年)に、田中澄江さんが御池岳を花の百名山のひとつに選定され花の山としても有名です。西日本では珍しいクマガイソウの自生地としても知られていて、今回はそのクマガイソウを目当てに登ってきました。この日出会った花々は、『神秘の花を探して(御池岳)』をご覧下さい。
『テーブルランド』と呼ばれる山頂台地は、南北約3km、東西数百mと言われる広大な台地で、全山が石灰岩地質のため、特有のカルスト地形が見られます。雨水による石灰岩の浸食は、ドリーネ、ウバーレ、カレンフェルトなどと呼ばれる摺鉢状の凹地や石塔地形を造り出し素晴らしい風景を見せてくれています。『郷土資料』に「山上平坦ニシテ三十余池アリ」と紹介されて、御池なる山名もこのカルスト(池)にちなんだものと言われています。積雪期には、ドリーネに積った雪が日差しで青く見えるため、青のドリーネと呼ばれる絶景を見せてくれます。

花の季節は、平日でも駐車場が朝早くから込み合うため、7時過ぎに鞍掛トンネル東登山口の駐車場に到着しました。それでも残りスペースは数台という混み具合でした。駐車地から国道を歩きコグルミ谷登山口へ向かいました。



コグルミ谷は、御池岳の登山道としては一般的な谷道です。水の流れは少ないものの、積雪量の多い山域でもあり季節を問わず湿潤な環境にあります。入渓後から長命水辺りまでは、両側の斜面も急峻で自然の崩落で登山道も少し荒れている箇所もありますが、大きな危険個所はありません。お天気の良い日は、眩いほどの新緑風景を楽しみながら森林浴を楽しむことができます。イチリンソウ、ヤマブキソウ、オドリコソウ、ヒメレンゲ、タキミチャルメルソウなど植生も豊かで花の百名山に相応しい山域です。

長命水付近から谷が二股に分かれます。二股に挟まれた尾根を九十九折れに登山道は続いています。カタクリ峠まで登りきると藤原岳、白瀬峠からの道と合流します。この中尾根では、カタクリやイワカガミなどの花を見ることができます。


カタクリ峠付近から山頂台地にかけて自然林の林床では、シマリスが多く生息しています。地面や倒木などを移動しながら餌を探しているようです。早春から活動が活発になるようで、高い確率で可愛い姿に遭遇することができます。この日は、カタクリ峠から真の谷へは入らず一般道を歩きましたが、真の谷を山頂台地や、八合目へ歩くこともできます。
カタクリ峠から七合目、八合目と辿り、鈴北岳との分岐まで歩きますが、途中苔むす林床風景を見ることができます。




鈴北岳分岐地点から御池岳までは、真の谷の浅い支谷を歩きます。斜面にはバイケイソウの群落が多く、ニリンソウやヤマエンゴサク、ハクサンハタザオなどの花々が多く咲いています。
2015年2月21日に登った時の写真と比べると厳冬期の積雪量が多いことがよくわかると思います。


この日はスタートが早かったので山頂で小休止した後、山頂台地を周回して鈴北岳経由で鞍掛峠、駐車地に下山することにしました。カルスト地形独特の風景(ドリーネ、カレンフェルトなど)が随所に見られます。東西ボタンブチや天狗の鼻、ボタン岩などカレンフェルト、青のドリーネに代表されるドリーネ、そのドリーネに水が溜まった池が点在しています。
積雪期の青のドリーネは、もう一度は見てみたい風景のひとつです。厳冬期は、登山口までのアクセスが困難な上、積雪量の多い山域のため体力も要求されます。6年前に滋賀県側(鞍掛橋)から登りましたが、今も鮮明に残る絶景を見ることができました。


東のボタンブチ付近からは、藤原岳、孫太尾根、竜ヶ岳など早春の花を探し歩く鈴鹿の山々が一望でき、その向こうには伊勢湾までもきれいに見ることができます。東のボタンブチ付近からは伊勢湾を望むことができますが、西のボタンブチから琵琶湖が望めることを考えるとテーブルランドが如何に広大かを思い図ることができます。



台地の南側には、土倉岳、T字尾根への下降点があります。
まだ、南側から登ったことがありませんが、一度登ってみたいと思っています。

点在するカレンフェルトの造形ドリーネに溜まった池を見ながら周回を続けると、ボタン岩、西のボタンブチ、天狗の鼻などの石灰岩の岩場が現れます。テーブルランドの南側は、このような石灰岩質の急峻な斜面が続いています。


天狗の鼻から鈴北岳、鈴ヶ岳へ周回する道があるのですが、今回は下調べをしていなかったので、御池岳に戻り昼食をとってから鈴北岳へ向かいました。途中、この山域では二番目に大きい真の谷の源頭部にあたる真の池があります。

鈴北岳から駐車地の鞍掛トンネル東口駐車場までは、県境になっている鞍掛尾根を下ります。厳冬期は、鞍掛橋からこの尾根を歩いて御池岳を目指しました。お天気が良ければ、霊仙山や伊吹山、その奥に白山などを見ることができる雄大な尾根です。

鞍掛峠(くらかけとうげ)は、三重県いなべ市と滋賀県多賀町を結ぶ峠です。858年(天安2年)惟喬親王が藤原良房の追討を逃れ都から逃れる際、ここで馬の鞍を外して馬に休憩をとらせたことに因んで名付けられたと言われています。
古くは竜華峠(りゅうげとうげ)とも呼ばれ、三重県北部の人々は、納骨の際に京都に向かう道だったそうです。また、彦根周辺の人々は、伊勢神宮への参拝の際に通った道で、彦根藩の参宮道路でもあったようです。

