梅雨入り前に伊吹の花(伊吹山)
滋賀県の北部に位置する伊吹山(標高1377m)は、日本海側と太平洋側の気候が入り交じる気候で、地質が石灰岩質ということもあり多くの動植物が生息しています。そのような地理的、地質的、気候的な立地条件から北方系要素の植物、多雪型日本海要素の植物、好石灰岩系の植物が見られ、特殊な立地条件から伊吹(イブキ)の名前を冠した植物名が多いのも特色です。
そんな伊吹山でも近年の地球温暖化やニホンジカの食害、人の登山道以外での踏み荒らし等、複合的な要因で伊吹山独特の植生にも変化が起こっています。外来種や平地植物が繁殖による在来種の減少や絶滅、交配種の増加などにより、お花畑は以前の面影を無くしつつあります。地元では、地方自治体や民間のボランティアグループの方々が保全のために啓蒙活動や整備作業を続けられています。
花の最盛期は7~9月初旬で、今回は時期的に少し早かったのですが、久しぶりに伊吹山の様子を見に行ってきました。5合目以降の登山道は、以前に比べかなり崩落が進んでいます。元々大きな木々が無く岩肌が露出し、転石が目立つ登山道だったので、自然の浸食作用を受けやすい山肌です。百名山ということもあり多くの登山者が歩くことでより崩落を促進しているんだと思います。今回目立ったのは、この時期斜面を覆う黄色いイブキガラシの群生があまり見られなかったことです。原因はわかりませんが、その原因が「人」でないことを祈りたいです。

以前に比べ花数や種類が減っているとはいえ、やはり近畿の他の山に比べれば圧倒的に多くの花が咲いています。伊吹山自体、麓と山頂部では、概ね1200mの標高差があるため、麓から3合目、3合目から5合目、5合目から山頂周辺と咲く花も変化します。
- クサフジ(草藤、学名:Vicia cracca)
- キバナノレンリソウ(黄花の連理草、学名:Lathyrus pratensis L.)
- イブキノエンドウ(伊吹野豌豆、学名:Vicia sepium)
- ノアザミ(野薊、学名:Cirsium japonicum)
- エゴノキ(学名:Styrax japonica)
- サワギク(沢菊、学名:Nemosenecio nikoensis)
- ガマズミ(莢蒾、学名:Viburnum dilatatum)
- ミヤマイボタ(深山水蝋、学名:Ligustrum Tschonoskii)
- ハクサンハタザオ(白山旗竿、学名:Arabis gemmifera)
- タツナミソウ(立浪草、学名:Scutellaria indica)
- コウゾリナ(剃刀菜・顔剃菜、学名:学名:Picris hieracioides subsp. japonica)
- アヤメ(菖蒲、文目、綾目、学名:Iris sanguinea)
- ヤマツツジ(山躑躅、学名:Rhododendron kaempferi)
- フジイバラ(富士薔薇、学名:Rosa fujisanensis (Makino) Makino)
- オオカメノキ(大亀の木、学名: Viburnum furcatum )
- ハクサンフウロ(白山風露、Geranium yesoemse var. nipponicum)
- オドリコソウ(踊子草、学名:Lamium album var. barbatum)
- マユミ(真弓、学名:Euonymus sieboldianus)
- オオジシバリ(大地縛り、学名:Ixeris japonica)
- イブキガラシ(伊吹芥子、学名:Barbarea orthoceras Ledeb.)
- オオマムシグサ(大蝮草、学名:Arisaema serratum)
- イブキシモツケ(伊吹下野、学名:Spiraea dasyantha.)
- クサタチバナ(草橘、学名: Vincetoxicum acuminatum)
- ヒメウツギ(姫卯木、学名:Deutzia gracilis)
- ヒメレンゲ(姫蓮華、学名:Sedum subtile)
- コバノミミナグサ (小葉耳菜草、学名:Cerastium furcatum var. ibukiense)
- ウマノアシガタ(馬の足形、毛茛、学名:Ranunculus japonicus)
- ヒメフウロ(姫風露、学名:Geranium robertianum L.)
- ホウチャクソウ(宝鐸草、学名:Disporum sessile)
- ツルキジムシロ(蔓雉筵 、学名:Potentilla stolonifera Lehm. ex Ledeb.)
- イブキハタザオ(伊吹旗竿)
- タニギキョウ(谷桔梗、学名:Peracarpa carnosa)
- タチツボスミレ(立坪菫、学名:Viola grypoceras)
- マムシグサ(蝮草、学名:Arisaema serratum)
- その他数種
是非とも会いたかった花のひとつが、別名イブキグンナイフウロとも言われる『グンナイフウロ(郡内風露、学名:Geranium eriostemon var. reinii)』でした。伊吹山でもフウロと名の付く花は多いのですが、少し花の形が違い優雅な感じがします。
北海道西部、本州の磐梯山から伊吹山に分布し、低山帯から高山帯の開けた草地で見ることができます。和名のグンナイは「郡内」で、山梨県南東部にある都留郡(現在の北都留郡、南都留郡)に由来するとされています。今回は、ちょうど良い時に登れたようで、瑞々しい綺麗な花姿をたくさん見ることができました。
◎醒ヶ井の梅花藻
伊吹山から下山して、時間があったので醒ヶ井の梅花藻を見に立ち寄ってきました。滋賀県米原市に位置する醒ヶ井は、清流・地蔵川沿いの美しい小さな街で、江戸時代には五街道のひとつ中山道の61番目の宿場町として栄えていました。歴史的な建造物と並んで有名なのは、地蔵川に自生する梅花藻です。見に行こう見に行こうと思いながら今まで実現していなかったのですが、今回は足を運んでみました。
