中央分水嶺の妖精たち(赤坂山)
今年も行くことができた湖北の赤坂山と三国山…少しスタートが遅れて寒風を周回するつもりでしたが、三国山で折り返しピストンでマキノ高原へ下山しました。赤坂山、三国山は、日本海側と太平洋側を区切る中央分水嶺の中央部にあり、東西南北の気候や植生を合わせ持つ日本では稀なエリアです。低山ながら地域的に積雪量の多い山域になり、4月でも山間の谷筋には残雪が残っています。それでも例年より花々の開花は早いようで、この日も多くの春の妖精たちが出迎えてくれました。
マキノ高原から赤坂山へ通ずる赤坂山自然遊歩道には、スミレの仲間やクロモジ、アオダモ、オオカメノキなどの樹木の花々、そしてイワカガミやトキワイカリソウの群生を見ることができます。シハイスミレとよく似たマキノスミレ(マキノスミレの方が葉がより細い)も自生しているということですが、私には同定することはできませんでした。
この日の山行き記事は、「花が彩る県境尾根(赤坂山)」をご覧下さい。
登山道を彩る花の中でもよく見かけるのは、イワカガミ(岩鏡、学名:Schizocodon soldanelloides)です。ピンク系の花色と日差しに輝く葉っぱが良く目立ちます。同じピンク色でも白に近いものから赤に近いものまで様々です。イワカガミには数種類あるようですが、この山域のイワカガミは、オオイワカガミだと言われています。
そしてイワカガミに交じってよく見かけるのが、トキワイカリソウ(常盤碇草、学名:Epimedium sempervirens)です。本州(東北地方〜山陰地方の日本海側)の多雪地に自生するイカリソウの種のひとつです。花の色が紅紫色〜白色まであるそうですが、この山域では白色のものは見かけず、紅紫の濃いものから薄いものまでを見ることができました。
カタクリ(片栗、学名:Erythronium japonicum Decne.)も大きな群落はなく、登山道周辺に点々と花を咲かせています。近畿地方でももう少し南部よりの地域より、少し花の大きさは小ぶりなように感じました。
キンキマメザクラ(近畿豆桜、学名: Prunus incisa var. kinkiensis.)は、日本固有の桜の野生種で富山県・石川県・福井県・長野県南部・岐阜県および近畿・中国地方に分布しているマメザクラの変種とされています。
赤坂山周辺を代表する花のひとつがオオバキスミレ(大葉黄菫、学名:Viola brevistipulata)です。積雪量の多い日本海側の山地に広く分布する在来種で、鮮やかな黄色なので登山道でも目立つ存在です。
タムシバ(田虫葉、学名:Magnolia salicifolia)は、別名を「ニオイコブシ」と言われるほど花には芳香があり、早春の山に白い胡蝶が舞っているように優雅で美しい姿を見せてくれます。ちょうどいいタイミングで花を見ることができました。
明王ノ禿周辺から三国山へ向かう道をピンク色で染め上げるのがイワウチワ(岩団扇、学名:Shortia uniflora)です。イワウチワの仲間は、地域によって少し差異があり名称も異なっています。中国地方以東のものをイワウチワ、新潟県から東北にかけて見るやや大型のものをオオイワウチワ、北陸を含めた中部から近畿地方の日本海側の山地に自生しているものをトクワカソウと称しています。
イワウチワとトクワカソウは花の形はまったく同じ、葉に少し違いがあります。イワウチワのほうは葉の基部がくびれているのに対してトクワカソウのほうは円形に近い形をしているそうです。
小さくて大きな群生を見かけることはありませんが、赤坂山で出会えることを楽しみにしているのがイワナシ(岩梨、学名:Epigaea asiatica )の花です。このイワナシの実は、100gで1万円もする高級果実と言われています。まだ食べたことはないのですが…
この日は、その他にも多くの花々に出合うことができ、春を感じる良い山歩きになりました。
