花が彩る県境尾根(赤坂山)
マキノの愛発越(あらちごえ)から朽木の三国岳(さんごくだけ)まで続く高島トレイルは、日本海側と太平洋側を区切る中央分水嶺の中央部にあり、東西南北の気候や植生を合わせ持つ日本では稀なエリアとして知られています。数年前に初めて赤坂山から三国山を歩いた時、登山道に咲く色鮮やかな色彩と花種の多さに驚かされた記憶が今も鮮明に残っています。それからも機会があれば、花の時期に数度歩いてきました。今年も花の開花便りを耳にして行ってきました。
この日出会った花の記事は、「中央分水嶺の妖精たち(赤坂山)」をご覧下さい。
農業公園マキノピックランドを縦貫する県道小荒路牧野沢線には、延長約2.4kmにわたりメタセコイアが約500本植えられ、遠景となる野坂山地の山々とも調和し、マキノ高原へのアプローチ道として高原らしい景観を形成しています。
この並木は、昭和56年に学童農園「マキノ土に学ぶ里」整備事業の一環としてマキノ町果樹生産組合が植えたのが始まりですが、組合関係者をはじめとする地域の人々の手により慈しまれ、育まれて、その後さらに県道も協調して植栽され、延長が伸ばされたことから、現在のこの雄大な姿となったものです。メタセコイアは、中国原産、スギ科メタセコイア属の落葉高木で、和名はアケボノスギ。最大樹高が115mにも及ぶといわれるセコイアにその姿が似ていることから、メタ(変形した)セコイアと名づけられています。春の芽吹き・新緑、夏の深緑、秋の紅葉、冬の裸樹・雪花と四季折々に訪れる人々を魅了します。平成6年、読売新聞社の「新・日本の街路樹百景」に選定され、注目を集めるに至っています。(びわ湖高島観光ガイドHP参照)
登山の起点となるマキノ高原には、キャンプ場やグランドゴルフ場、スキー場や温泉、レストラン施設があります。登山者用の駐車場も無料で開放していただいているのでアクセスも非常に良い環境にあります。
マキノ高原から赤坂山へは、赤坂山自然遊歩道を歩きます。赤坂山南尾根にある粟柄峠(760m)を通り、昔から近江と若狭の国境(江若国境)を結ぶ道の一つだったようです。また、粟柄峠で高島トレイルと合流しています。赤坂山までの道は、木橋や階段など朽ちている箇所もありますが、全般的に歩きやすく危険な個所もありません。イワカガミをはじめトキワイカリソウやスミレの仲間、カタクリ、キンキマメザクラなどが登山道を彩り、クロモジやアオダモなどの木々にも花がついていました。
粟柄越(あわがらごえ)は、福井県美浜町新庄と滋賀県高島市マキノ町を結ぶ峠道で、赤坂山南側尾根の標高760mの粟柄峠を通る近江と若狭の国境(江若国境)を結ぶ道の一つです。周辺には、大きな岩に「峠の石仏」があり、三面の顔を持つ馬頭観音ではないかと言われています。荷駄を運ぶ馬の安全を守る仏として祀られたのではないかと思われ、歴史を垣間見ることができます。
赤坂山は琵琶湖の西北端のマキノ町の滋賀・福井県境に位置する標高823.8mの山で、360°展望が開け琵琶湖と若狭湾を見ることができます。また、気象条件が良ければ白山連峰を望むこともできますが、この日は中国大陸から黄砂が飛来していて、眺望は今一つでした。高島トレイルの一角を担っていて、多くの山野草が自生し、紅葉時期、積雪期を含め、四季折々多くの登山者で賑わっています。
赤坂山から三国山へ向かうため、一旦下りまず明王ノ禿を目指します。
明王ノ禿は、赤坂山山頂から北東方向にある崩落地で、花崗岩が風化して崩れた急崖に奇岩が並ぶ景勝地です。この明王ノ禿一帯は、昔から水晶がとれたそうで、今でも水晶の欠片が見つかると言われています。今回は、水晶を探すことが目的ではなかったのですが、登山道傍に咲く花を撮影していた時、偶然目に入った石が水晶の結晶がついた石でした。
明王ノ禿から三国山への道には、赤坂山自然歩道とは違いイワウチワ(トクワカソウ)の群生が出迎えてくれます。登山道の脇は、いたるところにピンクの花が咲き、日差しを浴びて輝く葉っぱと共にフラワーロードと言って差し支えない光景が広がっています。イワウチワ以外にもカタクリやバイカオウレン、オオバキスミレ、イワナシ、タムシバなど多くの草木が自生しています。