気高く聳える信仰の山(綿向山)
ソロ登山の私にとって、積雪期に自分のスキルで登ることができる山は、どうしても限られてしまいます。その限られた山の中で、登山口までのアクセスが良く、手軽に冬山を楽しめる山のひとつが鈴鹿山脈の西端にある綿向山です。標高1110mで低山と言える山ですが、冬季は積雪量も多く、西からの季節風が吹き抜ける地形で、山頂近くのブナ原生林につく霧氷や北尾根の風景は、雪山の情景を満喫できます。綿向山は、7世紀頃から山岳信仰の対象として崇拝されている山で、山頂には、馬見岡綿向神社の奥之宮(大嵩神社)があり、古来より 20年毎に社殿を建て替える式年遷宮の祭事が今も絶えることなく続けられています。
日野町では、1996年から山の標高にちなんで11月10日を「綿向山の日」と制定して、清掃活動やPR活動を行っています。御幸橋駐車場も無料で開放されていますが、登山客による迷惑駐車が甚だしく、登山客のモラルが問われています。また、コース名にあるように山頂の大嵩神社への参道でもあり、トレランなどは控えるよう登山道には注意書きがされています。
【綿向山冬山登山について】日野観光協会のHPを参考にして下さい。



北畑谷林道の途中にある綿向山麓接触変質地帯は、国の天然記念物に指定されています。石灰岩との接触により生まれ、赤サビ色、黒色等が混じり、独特の岩肌を見せています。

西明寺川に沿って林道を終点まで進むとヒミズ谷避難小屋があります。ここで登山道は、綿向山表参道コースと水無山北尾根コースに分岐します。但し、冬期は水無山北尾根コースの通行は控えるようにとのことです。

綿向山表参道コースの一番の特徴は、山道に入り五合目まで続く長い九十九折れの登山道です。直線距離で約630m(標高差約350m)を歩行距離約1950mと約3倍かけて登っています。昔からそうなのか?植林地の保護のためなのか?わかりませんが、九十九折れのおかげで、かなり楽に登ることができていると思います。これも人の知恵ですね。

五合目は、北側竜王山方向が開けていて、立派な避難小屋が建てられています。この日は、ここでアイゼンを装着しました。
五合目から七合目(行者コバ)までは、尾根を巻くように道は続いています。徐々に植林地に自然林が混ざるようになってきます。

七合目には、町内信者によって祀られた綿向行者堂があり、この辺りを行者コバ(山伏コバ)と呼ぶそうです。ブナの原生林に囲まれた静かな場所で休憩には最適です。

山頂へは、夏道と冬道があります。夏道は尾根を直登せず、右の谷を巻きながら続いています。冬道は尾根を直登する道です。綿向山に限らず、積雪期は谷筋をトラバースすること自体が危険なので、原則、直登する道が推奨されます。冬道は直登するルートだけあって、かなり急勾配な斜面を登ります。積雪量がある程度あるほうが楽かもしれません。九合目辺りからブナの低木林を通りますが、霧氷が付いていれば、霧氷のトンネルを歩く至高の区間になります。



山頂には、馬見岡綿向神社の奥之宮(大嵩神社)があります。神武天皇の御代、綿向山に出雲国開拓の祖神を迎え祀り、欽明天皇6年(545)その頂上に祠を建てたのが馬見岡綿向神社の始りと伝えられています。また、その隣には、昭和45年(1970)日野町日野青年団が主体となって建てられた石積みの「青年の塔」(高さ5.3m)があります。


この日は残念ながら霧氷はほとんどありませんでしたが、残雪量はそこそこあり雪山らしい雰囲気を味わえました。お天気も晴天とは言えないまでも青空も顔を覗かしてくれて、雨乞岳や鎌ヶ岳、イブネ、クラシなど鈴鹿の山並みを楽しみことができました。山頂で景色を楽しんだ後、大好きな北尾根に向かうことにしました。


綿向山の北側に延びる尾根は、イハイガ岳から先は雨乞岳へ続いています。尾根には高木がなく笹原が続く尾根なので、積雪期は延々と雪原が続いています。毎回、途中まで雪原を歩くのですが、1000m級の低山とは思えない雪景色を楽しめます。大きな危険個所はありませんが、東側斜面は雪崩が多く、少し気温が緩むと崩れてしまいます。あまり東側に寄り過ぎないように注意が必要です。
